ウレタン注入工法とは?仕組みやメリットと注意点、適用されるケースについて

ウレタン注入工法は、地盤の沈下などによって発生した床の傾き・段差・たわみ、床下の空隙・空洞を迅速に修正できる補修技術として、工場・倉庫・商業施設・店舗など様々な施設で採用されています。
ウレタン樹脂を土間コンクリート床下の地盤に注入し、ウレタン樹脂の発泡圧力で土間コンクリート床や基礎コンクリートを押し上げ沈下を修正する工法です。既設の床を壊さず施工できるため、工期が短く、工場・倉庫・商業施設・店舗の操業や営業を止めずに修正が可能です。
本記事では、この工法の仕組みやメリットと注意点、さらに実際にどのようなケースで適用されるのか、硬質発泡ウレタン樹脂を用いた弊社独自のウレタン注入工法「アップコン工法」について詳しく解説します。
目次
ウレタン注入工法とは?
ウレタン注入工法は、沈下が生じている土間コンクリート床下の地盤にウレタン樹脂を注入します。ウレタン樹脂の発泡圧力で土間コンクリート床や基礎コンクリートを押し上げ沈下を修正し、土間コンクリート床の傾き・段差・たわみ、床下の空隙・空洞を解消する工法です。
床下に注入されたウレタン樹脂は、短時間で発泡する圧力で地盤を圧密強化しながら、地耐力を向上させ、土間コンクリート床を下から押し上げて修正します。
ウレタン注入工法は、既設の土間コンクリート床の取壊しや養生期間を必要としないため、コンクリート打替え工法などの従来工法と比較し大幅な工期の削減を実現します。
アップコンでは、独自のウレタン注入工法「アップコン工法」を展開しています。
ウレタンの特性
では、ウレタン樹脂はどのような特性があるのでしょうか。
ウレタン樹脂は、施工現場において非常に優れた特性を持っています。
ウレタン注入工法で使用する硬質発泡ウレタン樹脂は、A液(ポリオール)とB液(イソシアネート)の2液が混ざり合うことで(撹拌されて)化学反応を起こします。液体状態からクリーム状態に変化し、その後ゲル状態となって最終的に固体となります。
発泡時に発泡圧力という膨らむ力が生まれ、この発泡圧力を使って沈下したコンクリート構造物を持ち上げています。わずかな隙間にも入り込むため、隙間なく空隙・空洞を充填します。
アップコン工法の場合、ウレタン樹脂の影響範囲を考慮し、1m間隔でウレタン樹脂を注入し、床下の空隙・空洞を残すことなく100%充填します。注入間隔を広げた場合、一見まっすぐになった床でも、床下に空隙が残ってしまい再沈下やコンクリート床にひび割れが発生する可能性があるためです。
また、1m間隔で注入孔を設けることで、適正な箇所から注入を行うことができ、床のひび割れの発生を抑え、床に負担をかけずに沈下を修正し精度の高い仕上がりを提供します。
ウレタン注入工法のメリットと注意点
建物の床の沈下修正、床下の空隙・空洞充填に有効なウレタン注入工法ですが、どのようなメリットと注意点があるのでしょうか。床の傾き、床下の空隙・空洞の補修工法選択の際に参考にしてください。
ウレタン注入工法のメリット
ウレタン注入工法は、建物の床の沈下、床下の空隙・空洞充填を補修する際、操業や営業を止めずに施工が可能な方法として高く評価されています。
また、大きなメリットとして、短い工期で迅速に施工できる点も挙げられます。従来の補修方法では、長期間にわたり業務を止める必要がありましたが、ウレタン注入工法では工場・倉庫・商業施設・店舗の操業や営業を継続しながら補修を進められるため、機会損失による収益減少を防げるという大きな利点があります。
ウレタン注入工法の注意点
一方、ウレタン注入工法を採用する際には注意が必要な点もあります。床にドリルで穴を開けてウレタン樹脂を注入する作業が伴うため、施工前には、床下の配管や埋設物の位置を事前に確認する必要があります。
トータルコスト削減効果について
ウレタン注入工法は他工法に比べ、費用がやや高めの可能性がありますが、工場・倉庫・商業施設・店舗の操業や営業を止めることなく短工期で補修が可能なため、稼働停止による損失を防ぎ、結果的にトータルコストを抑えることが可能です。
例えば、工場のライン停止や商業施設・店舗の一時休業が必要な場合の機会損失と比較すると、ウレタン注入工法の選択が経済的に有利になるケースが多くみられます。
そのため、この工法は、特に生産ラインを止めることができない工場や、大規模なレイアウト変更が難しい建物、営業を維持しながら対応が求められる商業施設や店舗に適しています。
ウレタン注入工法が使用されるケース

ウレタン注入工法は、地震や地盤沈下などが原因で床の傾きが生じた際に、操業や営業を止めずに短期間での補修が求められる現場で多く採用されます。特に、以下のような状況で採用されることが多いです。
まず、建物や施設の床の一部が沈下した場合に、ウレタン注入工法であれば迅速に問題を解決できます。例えば、機械や荷物などの重量物を置いている工場や倉庫の床が部分的に沈下し、生産や作業に支障が出た場合にこの工法を使用することで、機械や荷物の移動をせずに、操業を止めずに修復できることが大きな利点です。
商業施設・店舗の場合、営業終了後の夜間に施工を行い、翌日の営業開始前までに元の状態に戻すことが可能です。営業に支障を出さずに床の沈下を修復します。
また、交通インフラの補修工法としても採用されています。高速道路などで多用されているコンクリート舗装版に段差や沈下などの変状が生じた場合、既存の舗装版を壊すことなく、開削をせずに補修が可能です。交通規制期間を最小限に抑えられるため、長期の交通規制が難しい現場で採用されています。
これらの例に共通して言えるのは、工期が短く、周囲への影響が少ないということです。施設やインフラの稼働を止めることなく補修が可能なウレタン注入工法は、現代の多様な現場で有効な選択肢となっています。
アップコン工法による建物の沈下修正、空隙・空洞充填の流れ
ここからは、独自のウレタン注入工法を用いた、弊社の「アップコン工法」の床の沈下修正、空隙・空洞充填の流れについてご紹介します。
沈下修正、空隙・空洞充填の流れ①:現地調査
アップコンでは、工場・倉庫・商業施設・店舗などの施設担当者様や所有者様などから、
- 床が傾き、機械や設備の水平が確保できない
- 機械稼働時やフォークリフトの走行時に床が振動する
- 荷物が傾き、まっすぐに高く積むことができない
- 床が水平でなく、台車やショッピングカートが勝手に動いてしまう
- 床の傾き・段差により従業員が安全に作業できない
などのご相談をいただきます。 そのようなご相談をいただいたら、まず、アップコンの技術スタッフが現地を訪問し、コンクリート床の沈下レベル測量や床下の空隙・空洞の状況を調査します。
沈下修正、空隙・空洞充填の流れ②:補修計画の立案
現地調査の結果をもとに、現状(建物床の構造、沈下量、空隙・空洞量、面積、)を把握した上で、最適な補修計画を立案します。
沈下修正、空隙・空洞充填の流れ③:補修工事の実施
アップコン工法による補修工事を行います。
【施工の流れ(アップコン工法/工場・倉庫・店舗・商業施設の場合)】
- 1.施工プラント車配置・施工前測量
- 2.ウレタン樹脂注入孔を削孔(直径約16mm、1m間隔)
- 3.床下へウレタン樹脂注入
- 4.床下のウレタン樹脂 充填確認
- 5.施工後測量
- 6.穴埋、清掃・片付
アップコン工法では、沈下が生じたコンクリート床下の地盤に対して、ウレタン樹脂を注入し、短時間で発泡する圧力を利用して、床を押し上げ沈下を修正します。

アップコン工法は、沈下したコンクリート床を解体して新たに新設する場合と比較して、大規模な仮設工事や多様な工種を必要としないため、施工性・経済性にも優れていると言えます。
(一般的なコンクリート床打ち替え工法とアップコン工法を比較すると、工期を1/10程度に短縮できます)
工場・倉庫・商業施設・店舗の操業や営業を止めることなく短工期で補修が可能です。
アップコン工法は、施工品質にこだわったウレタン注入工法
アップコン工法は、すでにご紹介したように、ウレタン樹脂の影響範囲を考慮し、1m間隔でウレタン樹脂を注入します。この注入間隔により、床下の空隙・空洞を残すことなく100%の充填を実現し、再沈下が生じるリスクを抑えます。
また、ウレタン樹脂注入者と測量者は別に配置し、常にミリ単位でのレベル管理を実施します。適正な箇所から注入を行うことで、床のひび割れの発生を抑え床に負担をかけずに沈下を修正し精度の高い仕上がりを提供します。
使用するウレタン樹脂にもこだわり、アップコンでは国内のウレタン材料メーカーと共同研究した、フロン・代替フロンを一切使用しない、環境にやさしい完全ノンフロン材の硬質発泡ウレタン樹脂を採用しています。
さらに、複数種類の樹脂を保有しており、現場ごとの条件や目的に応じて最適な樹脂を選定することで、安全性と施工品質の両立を図っています。
これらすべての工程は、専門教育を受けた自社社員が責任をもって対応します。現場の状況に応じた補修計画を立案し、調査から施工完了まで一貫した責任施工を実現しています。

詳しい施工の特長や施工の流れ、よくある質問などについては「アップコン工法とは」をご覧ください。
“ウレタン” で課題を解決するアップコン株式会社

私たちアップコンは、ウレタン樹脂を使用して工場・倉庫・商業施設・店舗・一般住宅などの沈下修正をおこなうこと、道路・空港・港湾・学校・農業用水路などの公共インフラを長寿命化させることで暮らしやすい社会とストック型社会へ貢献します。
また、ウレタン樹脂の新規応用分野への研究開発に取り組むことで、自ら市場を創りながら事業を拡大していきます。
「アップコン工法に適合する内容かわからない」「具体的な費用や工期が知りたい」「ウレタンでこんな施工ができないか」など、ご質問がございましたらぜひお気軽にご相談ください。