ホーム コラム一覧 薬液注入工法による地盤改良・沈下修正|工事内容や他工法との違い

columnコラム

2024/11/14 基礎知識

薬液注入工法による地盤改良・沈下修正|工事内容や他工法との違い

薬液注入工法は、建物や床の傾きを修正する沈下修正工事をはじめ、空隙・空洞充填、地盤改良にも採用される工法です。

今回は、沈下修正における「薬液注入工法」に焦点を当て、特徴やメリット・デメリット、工事の種類を解説します。また、その他の沈下修正との違いや、私たちアップコン独自の沈下修正「アップコン工法」との違いもご紹介します。

「建物や床の傾きが気になる」「沈下修正を検討している」という方は、ぜひご覧ください。

薬液注入工法による沈下修正について

はじめに薬液注入工法とは一体どういう工事なのか、その特徴や適したケースなどを見ていきましょう。

沈下修正とは

そもそも沈下修正とは、傾き・たわみ・段差が生じた建物やコンクリート床を、水平もしくは元のレベルまで修正する工事を指します。

地震や地盤沈下などが原因で生じたコンクリート床の沈下・床下の空隙(くうげき)や空洞に対してアプローチする工事で、ジャッキなどを使って建物やコンクリート床を押し上げたり、特殊な注入材を注入して建物やコンクリート床を押し上げたりといった方法があります。

混同されやすい工事に地盤改良がありますが、地盤改良は地盤そのものを強化することを目的としているのに対して、沈下修正は建物やコンクリート床のたわみや傾き、段差を修正することを目的とした工事になります。

関連記事:【沈下修正の基礎知識】工事内容・工法・施工の流れなど

薬液注入工法の内容

薬液注入工法は数ある沈下修正・地盤改良工法の一つです。基本的に注入管を使用し地盤内に凝固する性質をもった薬液を注入し、地盤の強化や止水、液状化の防止などの地盤改良を行います。沈下修正の場合、繰り返し薬液を注入、あるいは注入圧を活用して建物や床の沈下を修正する工法です。

薬液注入工法にはいくつか施工方法があり、注入する薬液にも種類があります。

なお、空洞や空隙などの隙間に注入する材料を「グラウト」と総称することから、「グラウト注入工法」などとも呼ばれています。

薬液注入工法に適したケース

薬液注入工法は、主に住宅や事務所の沈下修正で採用される工法です。また前述した通り、沈下修正の他にも、地盤の強化や止水、液状化の防止などの地盤改良工事にも用いられています。

その他の沈下修正方法については「【一覧】沈下修正の工法まとめ|各工法の工事内容や特徴」でご紹介していますので、あわせてご覧ください。

沈下修正に薬液注入工法を採用するメリット

次に、薬液注入工法のメリットについてご紹介します。

短工期で施工可能

薬液注入工法の大きなメリットの一つが、土を掘削する必要がなく薬液が硬化する時間も早いため、工期が比較的短く済む点です。

適用範囲が広い

薬液注入工法は数ある沈下修正・地盤改良工法の一つです。基本的に注入管を使用し地盤内に凝固する性質をもった薬液を注入し、地盤の強化や止水、液状化の防止などの地盤改良を行います。沈下修正の場合、繰り返し薬液を注入、あるいは注入圧を活用して建物や床の沈下を修正する工法です。

薬液注入工法は、沈下状況や施工範囲、求める効果に応じて薬剤の種類や工法が選べるのが特徴です。また注入する薬液によっては、同時に地盤を強化する対策としても有効です。

地盤沈下などで傾いた家のイメージ画像

沈下修正に薬液注入工法を採用するデメリットと注意点

次に、薬液注入工法のデメリットと注意点についてご紹介します。

地盤変位のリスク

薬液注入工法には、注入材の圧力により地盤に変位が生じてしまうリスクがあります。

地盤中に高圧で薬液を送り込むため、その圧力によって周辺地盤に変位が生じる可能性があります。特に、既存の構造物や地中埋設物が近接している場合、これらの施設に悪影響を与える恐れがあるので、適切な注入圧や注入量を厳密に管理することが重要です。

浸透不良・固化不良の可能性

薬液の種類によっては、地盤内で十分に浸透せず、固化しきらない現象を起こす恐れがあります。薬液の浸透具合が土質によっても異なり、施工中に把握することが難しいためです。

固化不良を起こすと品質にムラが生じたり、地盤の掘削作業をした際に出水事故や崩壊が発生するリスクが高まりますので、工事着手前の地盤調査や、工事中および工事後の経過をよく観察することが求められます。

環境への影響

注入材であるグラウト材はアルカリ性のため、注入箇所の水質・土質が変化してしまう可能性があります。周辺の生態系に影響を及ぼす恐れがありますので注意が必要です。

六価クロムが溶出するリスク

注入材の種類によっては、六価クロムが溶出するリスクがあります。セメント系固化剤の原料には、自然由来の三価クロムが含まれており、セメントの製造過程で一部が酸化され、六価クロムに変化します。

通常、セメントの水和反応により六価クロムは水和物に固定されますが、特定の土質と混合すると、この固定プロセスが阻害され六価クロムが溶出される可能性があります。

溶出を防ぐためには、対象の土質と使用する注入材の相性を事前に確認することが重要です。

このように、薬液注入工事は高い技術力や適切な管理・対策を要するため、業者選びは慎重に行わなければなりません。

薬液注入工法による沈下修正工事の大まかな流れ

薬液注入工法による沈下修正工事の大まかな流れは次の通りです。

【薬液注入工法の大まかな流れ】
①:薬液を注入するための孔をあける。その後、基礎下へ注入材を注入する。
②:レベルを監視しながら、水平になるまで薬液を注入する。

方法や薬液によって若干異なりますが、流れとしては「削孔→注入」と、とてもシンプルです。

薬液注入工法の種類

薬液注入工法には主に4つの種類があります。

①:二重管ストレーナー工法(単相式)
②:二重管ストレーナー工法(複相式)
③:二重管ダブルパッカー工法
④:浸透固化処理工法

薬液注入工法①:二重管ストレーナー工法(単相式)

二重管ストレーナー工法(単相式)とは、二重管ボーリングロッドを注入管として、瞬結性薬液を使用する工法です。削孔後、掘った穴に瞬結性薬液を注入して、地盤に粘着性を与えます。

瞬結性薬液は、注入後に数秒で固まる特性を持つ薬液で、土の流動を瞬時に止めることができます。そのため、広い範囲への流出がなく、局所的な沈下修正で主に採用される方法です。

また、二重管ストレーナー工法(単相式)はコストも比較的かからず、周辺環境への影響が少ないなどのメリットもありますが、一般的には次の複相式を採用するケースの方が多い傾向にあります。

薬液注入工法②:二重管ストレーナー工法(複相式)

二重管ストレーナー工法(複相式)も、同じく二重管ボーリングロッドを用いて薬液を注入していく工法です。単相式と異なる点として、瞬結性薬液に加えて、高い浸透力で広範囲の地盤を固化するのに適した浸透性薬液(緩結性薬液)も注入していきます。

流れとしては、所定の深さまで削孔した後、まずは瞬結性薬液を一次注入し、次に浸透性薬液を二次注入します。

薬液注入工法③:二重管ダブルパッカー工法

二重管ダブルパッカー工法とは、注入外管をあらかじめ埋没させ、埋没させた注入外管の中に注入内管を入れて薬液を注入する方法です。

はじめに所定の深度まで削孔したあと、シール材を充填して注入外管を挿入。ケーシングパイプを引き抜いてパッカー付きの注入内管を入れ、2段階に分けて性質の異なる薬液を注入していきます。

ダブルパッカー工法では、一次注入にて地盤を均一化させるセメントベントナイト液(CB液)を、二次注入にて浸透改良を目的とした溶液型の薬液を注入していくのが一般的です。

二重管ストレーナー工法と比べると手間やコストがかかりますが、注入範囲が限定でき、さらに薬液の漏れを防ぐことが可能です。また地盤が均一になるので、大規模な沈下修正にも適しています。

薬液注入工法④:浸透固化処理工法

浸透固化処理工法は、二重管ダブルパッカーに加えて、浸透性の高い恒久薬液※1を注入し、間隙水※1を薬液に置換する工法です。これにより、薬液がゲル化して地盤に粘着力を付加することができます。

※1 恒久薬液とは、地盤を恒久的に固化・補強する薬液のこと。
※2 間隙水とは、土粒子間の隙間にある水のこと。

主に液状化リスクの高い地盤に対して用いられる工法で、薬液の劣化がほとんど生じないのも特徴です。

薬液注入工法とその他の工法との違い

薬液注入工法以外にどのような沈下修正方法があるのか、また、同じく液剤を注入するウレタン注入工法との違いについてご紹介します。

薬液注入工法以外の沈下修正工法について

薬液注入工法と同じく、住宅や事務所などの沈下修正に適した工法に「アンダーピニング工法」「耐圧板工法(耐圧盤工法)」「土台上げ工法」「ウレタン注入工法」があります。

【住宅や事務所などの沈下修正に適した工法】

  • 薬液注入工法
  • アンダーピニング工法
  • 耐圧板工法(耐圧盤工法)
  • 土台上げ工法(プッシュアップ工法)
  • ウレタン注入工法

薬液注入工法とウレタン注入工法との違い

上記のなかで、薬液注入工法と同じく液剤を注入するのがウレタン注入工法です。

薬液注入工法は凝固性のある薬液を繰り返し注入し沈下を修正します。ウレタン注入工法は硬質発泡ウレタン樹脂を注入し、発泡圧力を活用して沈下を修正する工法となっています。

なお、私たちアップコン株式会社の特許工法「アップコン工法(特許第6302611号)」はウレタン注入工法に分類される沈下修正工法です。

沈下修正「アップコン工法」の特長

アップコン工法は、国内のウレタン材料メーカーと共同研究した沈下修正・空隙充填に適した硬質発泡ウレタン樹脂を使用したウレタン注入工法です。

沈下・段差・傾き・空隙・空洞が生じた既設コンクリート床下の地盤にウレタン樹脂を注入し、床下に注入されたウレタン樹脂が、短時間で発泡する圧力で地盤を圧密強化しながら、地耐力を向上させ、コンクリート床を下から押し上げて元のレベルに修正します。

注入されたウレタン樹脂の影響範囲は半径約1mのため、アップコン工法では原則1m間隔での注入を行うことで、床下の空隙・空洞を100%隙間なく充填すると同時に、再び沈下するリスクを最小限に抑えていきます。 またウレタン樹脂注入者と測量者は別に配置し、常にミリ単位でのレベル管理を実施します。適正な箇所から注入を行うことで、床に負担をかけず沈下を修正します。100%自社社員による責任施工で精度の高い仕上がりを提供します。

さらに、ウレタン樹脂は約60分で最終強度が発現するため最短1日〜で施工が完了し、施工後の養生期間も必要ありません。操業や日常生活に影響がほとんど出ることなく、短工期で沈下修正ができる工法となっています。

アップコンでは、国内のウレタン材料メーカーと共同研究した、フロン・代替フロンが発生しない環境に安全な完全ノンフロン材の硬質発泡ウレタン樹脂を使用しています。

水や海水、並びに土中に含まれる他のほとんどの物質に対して溶出しないので、土壌に影響を与えない環境に配慮した硬質発泡ウレタン樹脂を使用しています。

アップコン工法の特徴

  • 特許取得(特許第6302611号 沈下した地盤上のコンクリート版を修正する方法)
  • 操業を止めずに短工期で沈下を修正
  • 100%自社社員による責任施工
  • 原則1m間隔の注入で床下の空隙・空洞を100%隙間なく充填
  • 環境に配慮した日本製の完全ノンフロンウレタンを使用

“ウレタン” で課題を解決するアップコン株式会社

“ウレタン” で課題を解決するアップコン株式会社

私たちアップコンは、ウレタン樹脂を使用して工場・倉庫・商業施設・一般住宅などの沈下修正をおこなうこと、道路・空港・港湾・学校・農業用水路などの公共インフラの長寿命化をおこなうことで暮らしやすい社会とストック型社会へ貢献します。

また、ウレタン樹脂の新規応用分野への研究開発に取り組むことで、自ら市場を創りながら事業を拡大していきます。

「アップコン工法に適合する内容かわからない」「具体的な費用や工期が知りたい」「ウレタンでこんな施工ができないか」など、ご質問がございましたらぜひお気軽にご相談ください。

関連記事